トロンフォーラム

TRONリアルタイムOS ファミリーがIEEE Milestone として認定

TRONリアルタイムOS ファミリーがIEEE Milestone として認定

このたび「TRONリアルタイムOS ファミリー」 がIEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers:米国電気電子学会) によりIEEE Milestone として認定されました。

IEEE Milestone は、IEEE の広範な活動分野である電気・電子の分野において達成された画期的なイノベーションの中で、開発から少なくとも 25 年以上経過し、社会や産業の発展に多大な貢献をした歴史的業績を認定する制度です。

今回受賞したMilestoneの正式名称は“TRON Real-time Operating System Family, 1984” です。1984年に東京大学の坂村健の下で、コンピュータ・アーキテクチャのプロジェクトチームとそのパートナー企業によって、TRON プロジェクトが開始されました。これは今でいうIoT環境が一般化した時代を見据えて、組込みシステムの効率的な開発環境を確立するための、当時としては珍しいオープンイノベーション型のプロジェクトでした。この開発環境の中核として企画研究され開発されたのがTRON リアルタイムOSファミリーです。このOSは広く使われ、現在も改良され進化し続けています。その成果の一つµT-Kernel 2.0の仕様はIEEE規格(2050-2018)に採用されています。

今回の認定理由の全文を引用します。:
“In 1984, a computer architecture project team at the University of Tokyo began designing The Real-time Operating system Nucleus (TRON) OS family and helping external partners commercialize it. Specifications and sample source code were provided openly and freely, facilitating innovations by developers and users. TRON real-time OS family copies have been adopted worldwide in billions of embedded computer devices, including aerospace and industrial equipment, automotive systems, and home electronics.“
(参考訳:1984年、東京大学のコンピュータ・アーキテクチャのプロジェクトチームが、OSファミリー「The Real-time Operating system Nucleus(TRON)」の設計と、外部パートナーによる製品化の支援を開始した。仕様書やサンプルソースコードをオープンかつ自由に提供し、開発者や利用者のイノベーションを促進した。TRONリアルタイムOSファミリーは、航空宇宙機器、産業機器、車載機器、家電製品など、世界中で数十億台の組込み機器に採用されている。)

坂村トロンフォーラム会長は認定の通知を受けて次のように語っています。
「IEEE Milestoneの認定は、私たちの日常生活や社会インフラとなる数多くの製品を支えてきたTRONリアルタイムOSファミリーのプロジェクトとそのメンバー、利用者にとって大変名誉なことです。私たちTRONプロジェクトの活動がこのように評価されたことを大変うれしく思います。今後も、TRONリアルタイムOSファミリーとその開発、およびそれを支えるネットワーク環境の提供、改善、普及に努め、コンシューマ市場で容易に利用できるような活動を続ける所存です。これまでのご協力に感謝するとともに、今後の推進活動へのご協力をお願いいたします。」

なお、IEEE Milestoneの認定を記念して授与されるブロンズ銘板は、今後、一般向けに恒久展示を行います。展示場所の東京大学で、IEEE Milestoneの贈呈式を今秋開催する予定です。

【参考情報】

IEEE について

IEEEは、人類の利益のために技術を進歩させることを目的とした世界最大の技術専門組織です。IEEEとIEEEメンバーは頻繁に引用される出版物、国際会議、標準規格(スタンダード)、および専門的・教育的活動を通じ、航空宇宙システム、コンピュータ、テレコミュニケーションから、バイオメディカル・エンジニアリング、電力、コンシューマー・エレクトロニクスに至るまで、幅広い分野で信頼されています。

IEEEについて、詳しくは次のURLをご覧ください。
https://www.ieee.org/ 

IEEE Milestoneについて

電気電子工学とコンピューティングプログラムにおけるIEEE Milestone は、IEEEに関連するあらゆる分野における重要な技術的業績を称えるものです。それはIEEE History Committeeのプログラムで、IEEE History Center を通じて運営されています。

IEEE Milestoneは、ユニークな製品、サービス、重要な論文、特許に見られる人類の利益につながる技術革新と卓越性を評価するものです。

IEEEは、1984年の100周年記念式典に合わせて、IEEEが代表する専門職や技術を生んで育てた巨人の世紀 (Century of Giants)の功績を称えるために、1983年にMilestones Programを設立しました。

各Milestoneは、IEEEに代表される技術分野において、25年以上前に誕生し、地域での広がり以上の影響を与えた重要な技術的業績を認定するものです。現在までに、世界中で230以上のMilestoneが承認され、贈呈されています。

IEEE Milestone について、詳しくは次のURLをご覧ください。
https://ieeemilestones.ethw.org/Main_Page

TRON プロジェクトについて

TRONプロジェクトは、1984年に発足した産学共同のコンピュータ・アーキテクチャの開発プロジェクトです。坂村健、IEEE Life Fellow/IEEE Computer Society Golden Core Member、東京大学名誉教授、INIAD(東洋大学情報連携学部) 学部長、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所長をプロジェクトリーダーとし、組込みシステム向けのリアルタイムOSとその開発環境整備からIoTネットワークまで、様々なコンピュータ分野の開発を進めています。

TRONプロジェクトの成果は、自動車のエンジン制御、デジタルカメラや携帯電話などの情報家電といった民生分野の製品から、工場内の機械制御といった産業分野まで、さまざまな分野の組込みシステムに世界中で幅広く利用されています。

TRON プロジェクトはオープンアーキテクチャを標榜しプロジェクトの活動を行ってきました。また、国際標準化団体に積極的に技術仕様を標準案として提案し、基盤技術の国際標準化に貢献しています。

トロンフォーラムについて

トロンフォーラムは、TRON プロジェクトの推進のため2002年に設立されました。組込みシステムの開発環境を整備するT-Engineプロジェクトと、ucodeをはじめとするユビキタスIDセンターの運営を軸として、積極的な活動を展開してまいりました。

2015年5月には坂村会長が、ユビキタス・ネットワークやIoTの起源となったオープンアーキテクチャTRONを提唱したことにより、アジアからただ一人、ビル・ゲイツ氏らとともにITU150周年賞を受賞しました。また、2023年1月には坂村会長が「消費者向け電化製品に使われる組込みコンピュータ用のオープンでフリーなOSの開発に果たしたリーダーシップ」に対して、IEEEからIEEE Masaru Ibuka Consumer Technology Awardを受賞するなど、その活動内容は世界的にも高い評価を得ています。

トロンフォーラムについて、詳しくは次のURLをご覧ください。
https://www.tron.org/ja/

オープンアーキテクチャ

TRONプロジェクトは開始当初からオープンアーキテクチャを前面に掲げてプロジェクトを推進してきました。オープンアーキテクチャを元に開発されたコンピュータは、そのオープン性により、広くあらゆる機器に組み込まれ、私たちの生活をサポートする開かれたIoTネットワーキング環境を実現することを目指しています。

TRONプロジェクトの成果物であるT-Kernel、μT-KernelなどのリアルタイムOSのソースコードは完全に公開されており、複製や改変、製品への利用も自由に行うことができます。

TRONプロジェクトに関係する国際標準

TRONプロジェクトでは仕様やソースコードをオープンにするだけでなく、ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)やISO(国際標準化機構)などの国際標準化団体に積極的に標準仕様を提案し、基盤技術の国際標準化に貢献しています。

米国の標準化団体 IEEE (Institute of Electrical and Electronics Engineers)が2018年に定めた小規模組込みシステム向けリアルタイムOSの国際標準規格IEEE 2050-2018では、トロンフォーラムが開発したリアルタイムOS μT-Kernel 2.0の仕様がベースに採用されました。そして最新のμT-Kernel 3.0は、IEEE 2050-2018に完全に準拠した国際標準のリアルタイムOSとなっています。

また IoT 時代に様々なデバイスやデータの同定を行うための識別子システム ucode を提案し、それをもとにしたコード体系が ITU-T で標準化されています。(Y.4804/H.642.1。これに関連する標準、ITU-T Y.4551/F.771、Y.4802/H.642.2の制定にも貢献しています。)

お問合せ

トロンフォーラム事務局(担当:柏、石川)
TEL:03-5437-0572
FAX:03-5437-2399
Email: press@tron.org
URL: https://www.tron.org/ja/

 

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