TRONプログラミングコンテスト審査結果発表
- RTOSアプリケーション部門から2作品、 開発環境・ツール部門から1作品が優秀賞に選定 -
トロンフォーラム(会長:坂村健・東京大学名誉教授/INIAD cHUB(東洋大学情報連携学 学術実業連携機構)機構長)が、国内外のマイコンメーカ4社とともに2023年12月11日(月)より実施していた「TRONプログラミングコンテスト」(以下、「本コンテスト」)の入賞作品の発表及び表彰を、「2024 TRON Symposium-TRONSHOW-」(主催:トロンフォーラム、会期: 12月11日(水)-13日(金)、会場:渋谷パルコDGビル18Fカンファレンスホール「Dragon Gate」)で12月12日(木)13時から開催した「TRONプログラミングコンテスト表彰式」で行いました。
本コンテストは、国内外の技術者及び学生を対象として、世界標準であるTRONのリアルタイムOS「μT-Kernel 3.0」を用いたマイコンのアプリケーション、ミドルウェア、開発環境、そしてツールなどの各分野で競うプログラミングのコンテストとして、賞金総額500万円をかけて実施しました。参加した開発者は、各メーカから供与された最新のマイコンボードを用いて、RTOSの特性を活かした作品や新技術を活用した開発環境やツールについて、その完成度やアイデアを競いました。
その結果、国内外およそ60件のエントリがあり、そのうち30件から最終的に作品が応募されました。これらの作品を利便性、実用性、独創性、将来性などの観点から総合的に評価し、μT-Kernel 3.0のプログラムとして、リアルタイムOSのプログラムの特徴が実現できている点を高く評価しました。また、オープンソースとして公開することを評価のポイントとしました。
坂村審査員長をはじめ、開発ボードを提供いただいたインフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社、STマイクロエレクトロニクス株式会社、NXPジャパン株式会社、ルネサス エレクトロニクス株式会社及びパーソナルメディア株式会社の審査員による厳正なる審査の結果、以下のとおり優秀賞3件、入賞5件、激励賞2件が選ばれました。
TRONプログラミングコンテスト入賞者
受賞作品
RTOSアプリケーション一般部門 | |||
賞 | 受賞者 | 作品名 | 概要 |
優秀賞 | Jiabin WANG | 人体の圧力値をリアルタイムで測定できる装置のプログラム | パルスセンサーに指を触れることで心拍変動を測定しストレスレベル指数をLCDに表示する人体のストレスチェッカー |
入賞 | 湯澤 竜也 | サブセットPLCインタプリタ | μT-Kernel+micro:bitでPLC(Programmable Logic Controller)を実現 |
入賞 | 奥田 顕浩 | 職住環境チェッカー | 温度・湿度·照度·色温度·CO2濃度をリアルタイムで測定してLCDに表示 |
RTOSアプリケーション学生部門 | |||
賞 | 受賞者 | 作品名 | 概要 |
優秀賞 | 同志社大学ネットワーク情報システム研究室 | マイコンde協調型自動運転 | micro:bit搭載のロボットカー(maqueen)をコース上で同時に複数台動かした上で、同じ区間に複数のmaqueenが進入して衝突することがないように制御 |
入賞 | 李 きん佳 | Pawpaw | 飲水容器に水位センサーとジャイロセンサーを取り付け情報を取得し、デジタル植物やデジタルペットによって、飲水を促すシステム |
RTOSミドルウェア部門 | |||
賞 | 受賞者 | 作品名 | 概要 |
入賞 | 久保寺 祐一 | MQTTプロトコルによる通信を実現するためのライブラリ | μT-Kernel 3.0でMQTT通信を実現するためのライブラリ 「mtk3bsp2_mqtt」 |
入賞 | 本谷 茂 | Comado | 組込みマイコンのためのウインドウシステム |
激励賞 | 須藤 義明 | ハウスOS想定の後付けリモートスイッチシステム ATA-02 | トロンフォーラムが提唱するハウスOSの理念を取り入れ、家庭内のスイッチ操作を自動化する次世代スマートホームシステム |
開発環境・開発ツール部門 | |||
賞 | 受賞者 | 作品名 | 概要 |
優秀賞 | 阿部 耕二 | NT-Shell・CppUTestを使用した簡易テスト環境 | 組込み向けシェルライブラリNT-Shellと、 C/C++向けユニットテスト・フレームワークCppUTest (共にオープンソース)を利用したμT-Kernel 3.0用の簡易テスト環境 |
激励賞 | 西田 雄亮 | mtdbg | UART経由でPCからμT-Kernel/DSの呼び出しができるリモートデバッガ |
(※敬称略)
講評
坂村審査員長は、以下のように各作品に関する講評を述べています。
IoTの急速な普及に伴い、組込みシステムとその中核となるリアルタイムOSの重要性が日々増している。そして、カーボンニュートラルを目指す現代社会においてはエネルギー効率の高い組込みシステムの役割が一層重要となってきている。
情報処理系の汎用OSは技術者も多く柔軟性も高いため、情報処理用OSを組込みシステムに利用しようという例を多々見るが、エネルギー効率だけでなくセキュリティ課題からも決して最適解とは言えない。IoTが普及すればするほど、エネルギー消費の累積は大きな問題となり、セキュリティ課題解決も社会安定化にとっては重要だ。
このような背景から、組込み用リアルタイムOS の普及に拍車をかけるべく、今回、各マイコンメーカの協力を得て、最新のマイコンと世界標準の組込み用リアルタイムOSであるμT-Kernel 3.0を活用したプログラミングコンテストを開催した。多くの方々からコンテストへのエントリーが寄せられ、エントリー審査を経て選ばれた方々にはマイコンの評価ボードを提供し、プログラムの開発に取り組んでいただいた。
これらの入賞作品は、いずれもμT-Kernel 3.0を活用した入賞作品に相応しいものと考えられるが、リアルタイムOSの機能を最大限に活用し、リアルタイムOSを使ったからこそ実現できた作品であるかという点では、さらなる可能性が残されているように思われる。
本コンテストは第1回目の開催となるが、好評につき次回の開催も計画されている。今回のコンテストを契機として、技術開発に新たな挑戦と刺激がもたらされ、組込みシステム開発の新たな地平が切り拓かれることを期待している。
開催概要
主催 | トロンフォーラム |
特別協力 | インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社、STマイクロエレクトロニクス株式会社、NXPジャパン株式会社、ルネサス エレクトロニクス株式会社 |
技術協賛 | IEEE Consumer Technology Society West Japan Joint Chapter |
協力 | INIAD cHUB(東洋大学情報連携学 学術実業連携機構)、一般社団法人 組込みシステム技術協会、ユーシーテクノロジ株式会社、パーソナルメディア株式会社 |
開催期間 | エントリ期間:2023年12月11日-2024年3月31日 |
応募期間 | 2024年4月13日-2024年9月30日 |
表彰式 | 2024年12月12日 |
審査員長 | 坂村 健(東京大学名誉教授/INIAD cHUB(東洋大学情報連携学 学術実業連携機構)機構長) |
審査員 | 後藤 貴志:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社 パオロ・オテリ:STマイクロエレクトロニクス株式会社 大嶋 浩司:NXPジャパン株式会社 服部 敬宙:ルネサス エレクトロニクス株式会社 松為 彰:パーソナルメディア株式会社 |
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