2023年2月15日発売のTRONWARE VOL.199は2022 TRON Symposium―TRONSHOW―の総まとめ号となっている。未だコロナ禍が落ち着かない状況ではあるが、おかげさまで2022年12月にはTRONSHOWをリアルとオンラインのハイブリッドで開催することができた。会場には多くの方に来場していただき、またオンラインでもたくさんの方に配信を見ていただき、とても感謝している。
今回のテーマは「ネクスト・インフラ」。NTTを中心として設立された国際フォーラム「IOWN Global Forum」にも協力してもらい、光関連技術を活用して低消費電力、大容量、低遅延を実現する次世代のネットワーク構想「IOWN」(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)について大きく取り上げた。2023年3月からは、まず200分の1のレイテンシ(遅延)を達成し大容量データを低遅延で伝送できる「IOWN1.0」の商用サービスが開始される。こうした技術は遠隔手術やeスポーツなど、さまざまな場面での応用が期待されている。
また、公共交通オープンデータ協議会(ODPT)は、NPO「MobilityData」と戦略的パートナーシップのMOUを締結することとなり、TRONSHOW会場にて調印式を行った。MobilityDataは公共交通データフォーマットの標準化に取り組んでいる国際的な団体であり、GTFSやGBFSなどのデータフォーマットの標準化を行っている。Googleもそのデータを標準で採用しているなど、影響力の大きい団体だ。近年のODPTの活動は東京近郊にとどまらず全国に広がり始めており、地方の活性化にもつながっている。MobilityDataとの連携によって、ODPTが提供する公共交通のデータがさらに広く活用されることになるだろう。
今回のTRONSHOWでは、私が最近進めている重要なプロジェクトについて、すべてセッションを設けることができた。特集では講演やディスカッションの様子を詳しく紹介しているので、シンポジウムに参加できなかった方もぜひTRONWARE VOL.199をご一読いただきたい。
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2023年1月6日に、私が受賞した2023 IEEE Masaru Ibuka Consumer Technology Award(参考訳「IEEE 井深大コンシューマー・テクノロジー賞」)の授賞式が米国で行われた。残念ながら授賞式にはオンラインでの参加となったが、TRONプロジェクトを通じてリアルタイムOSの仕様、実装を無料で公開してきた活動に対してこうした賞をいただけたことは誠に光栄なことである。長年TRONプロジェクトを支援してくださっている皆様には、この場を借りてあらためて感謝の意を表したい。
坂村 健