トロンフォーラム

2024年で40年目を迎えたTRONプロジェクトをよろしくお願い申し上げます

2024年で40年目を迎えたTRONプロジェクトをよろしくお願い申し上げます

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

このメールのタイトルのとおり、2024年でTRONプロジェクトは開始以来、40年目を迎えることができました。TRONプロジェクトを支えてくださっている多くの皆様に、この場を借りて厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

40年目という節目の年にTRONプロジェクトはIEEEからIEEE井深大コンシューマー・テクノロジー賞を受賞し、IEEEマイルストーンも授与されました。

IEEE井深大コンシューマー・テクノロジー賞は、コンシューマー技術の分野での卓越した貢献を認めるもので、全35件ほどあり、過去にレイ・ドルビー、マーティン・クーパー、リーナス・トーバルズ、スティーブ・ウォズニアックなど、多くの傑出した技術者が受賞しております。

さらにIEEEマイルストーンの授与は、TRONプロジェクト全体にとって大きな栄誉と感じております。このマイルストーンは、産業化と長期にわたる社会的貢献を認められた国際的な発明・製品・プロジェクトに対して与えられる記念の銘板であり、その重みを深く感じております(実際10kgぐらいあります)。個人より成果を記念するということで、全240件ほどあり、コンピュータ関係ではENIACなどが授与されています。

毎年12月に開催しているTRON Symposium ─ TRONSHOW ─ でも、初日に実施した特別セッション「IEEEマイルストーン受賞記念の意義」で関係者に登壇していただきました。

このような国際的な栄誉を受けることができたのも、支えてくださった皆様のおかげと、心より感謝申し上げるとともに、TRONプロジェクト初期から多大なるご支援を賜りました皆様へ感謝します。

IoTの世界を目指し始めた当初から40年、TRONプロジェクトも生成系AIの登場によりAI+IoTの新たな可能性に向けて進化しております。

このAI+IoT化が進むときに、個々のエッジの高性能化が求められますが、それを単純にエッジの計算資源の拡大につなげた場合、AI+IoT化を進めれば進めるほど、社会全体でみると地球資源の消費につながってしまいます。そのような問題意識もあり、今回のシンポジュウムのテーマは「DX2GX─ICTで描く、カーボンニュートラルの未来」とさせていただきました。

キーノートスピーチでも、ICTの気候変動対策への貢献の可能性について、さらなる技術革新と未来への展望についてお話ししました。TRONでは、その一つの対応策として、IoT-Aggregatorモデルを従来より提唱しています。エッジをいたずらに高性能化するのでなく、常に必要な機能と限定的な状況に必要な機能を切り分け、特に後者のために高度な処理が必要なら、それをネットワーク経由で外部化するというものです。

このIoT-Aggregatorモデルの理想の実現においては、接続可能数を桁違いに大きくすると同時に、ネットワークの消費電力と通信遅延を桁違いに小さくすることが必要です。これを実現できるのが、全光ネットワークの「IOWN」。このIOWNについても、今回のシンポジュウムではNTT副社長の川添雄彦氏にご来場いただいて、詳しくご紹介いただきました。現在のネットワークに比べて消費電力1/100、伝送量125倍、遅延1/200と飛躍的な性能を発揮するIOWNと、リアルタイム性能に優れたTRONのOSを組み合わせることで、将来的にはエッジは最低限の安全機能と通信機能だけという──いわば「シン・エッジ」が可能になります。

この他、シンポジュウムでは「大和ハウス工業スマートロジスティクスオープンデータチャレンジ」の入賞者をお招きしたセッションや、JR東日本副社長の伊勢勝巳氏と東京都副知事の宮坂学氏をお招きして、「公共交通とデジタル地方創生のためのオープンデータ・プラットフォーム」をご紹介したセッションなどに、多くの方の注目が集まりました。

2023年9月に私が解説を担当した気候小説『未来省』が、トロンフォーラム幹事会員のパーソナルメディア社から発行されました。キーノートでも、この『未来省』に登場するテクノロジーや社会制度を切り口としてお話ししました。2020年10月にキム・スタンリー・ロビンスンによる原著「The Ministry for the Future」が発行されて以降、バラク・オバマ米元大統領やMicrosoft共同創業者のビル・ゲイツ氏などが「読むべき本の1冊」として紹介した気候小説です。シンポジュウムでも「未来省GXセッション」を通じて、GX(Green Transformation)に求められる組込みシステムやIoTの進化、そしてDX(Digital Transformation)に期待される役割について、東京工業大学 理事・副学長の桑田薫氏や、グーグル合同会社 Geoパートナーシップ日本統括の大沼利広氏とのセッションを行いました。

さらに、トロンフォーラムでは2023年12月11日から「TRONプログラミングコンテスト」を開始しました。これは、国内外の技術者や学生を対象に、μT-Kernel 3.0を用いたマイコンのアプリケーション、ミドルウェア、開発環境、そしてツールなどの各分野で競うプログラミングコンテストです。インフィニオン テクノロジーズ ジャパン、STマイクロエレクトロニクス、NXPジャパン、ルネサス エレクトロニクスといった主要マイコンメーカ4社による特別協力と、IEEE Consumer Technology Society West Japan Joint Chapterの技術協賛のもとで開催します。

特別協力4社のマイコンボード及びmicro:bitなどを各10枚(合計で50枚)用意しました。エントリーされた計画内容を審査したうえで、パスした応募者にマイコンボードを提供。これらのマイコンボードを用いて、応募作品の開発を進めていただきます。トロンフォーラムでは2024年3月31日(日)まで、エントリー申請を受け付けています。腕に覚えのある方は、コンテストの特設ページをご覧のうえ、この機会に是非、エントリーしてください。

本格的なリリースからたった1年で、世界規模であらゆる業種に影響を与えている生成AI。すでに私が学部長を務めるINIAD(東洋大学情報連携学部)では、ChatGPTを全学生が自由に利用できるようにするなど、新しい技術を習得した多くの若い学生を育てています。TRONプロジェクトでは、こうした新しい技術を使いこなす人たちとともに、気候変動やエネルギー問題に対して、組込みシステムがどのように貢献していけるのかということに取り組んでいきたいと思います。

本年もTRONプロジェクトをどうぞよろしくお願い申し上げます。

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