トロンフォーラム

TRONプログラミングコンテスト2025審査結果発表

各部門から優秀賞4作品をはじめ、入賞や激励賞など合計11作品を選定

トロンフォーラム(会長:坂村健・東京大学名誉教授/INIAD cHUB(東洋大学情報連携学 学術実業連携機構)機構長)が主要マイコンメーカ4社とともに2025年1月21日(火)より実施していた「TRONプログラミングコンテスト2025」(以下、「本コンテスト」)の入賞作品の発表及び表彰を、「2025 TRON Symposium-TRONSHOW-」(主催:トロンフォーラム、会期: 12月10日(水)-12日(金)、会場:渋谷パルコDGビル18Fカンファレンスホール「Dragon Gate」)で12月11日(木)15時から開催した「TRONプログラミングコンテスト2025表彰式」で行いました。

本コンテストは、国内外の技術者及び学生を対象として、世界標準であるTRONのリアルタイムOS「μT-Kernel 3.0」を用いてAIを活用したアプリケーション、ミドルウェア、開発環境、ツールなどのプログラムを競うコンテストとして、賞金総額500万円をかけて実施しました。参加した開発者は、各メーカから供与された最新のマイコンボードを用いて開発を進めました。

その結果、国内外およそ64件のエントリーがありました。そのうち31件最終的に作品応募に至りました。これらの作品を利便性、実用性、独創性、将来性などの観点から総合的に評価し、μT-Kernel 3.0のプログラムとして、リアルタイムOSのプログラムの特徴が実現できている点や今回のコンテストのテーマ「TRON × AI AIの活用」に即してAI技術を取り入れた作品を高く評価しました。また、オープンソースとして公開することを評価のポイントとしました。

坂村審査員長をはじめ、開発ボードを提供いただいたインフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社、STマイクロエレクトロニクス株式会社、ルネサス エレクトロニクス株式会社及びパーソナルメディア株式会社の審査員による厳正なる審査の結果、優秀賞として「LGX-Shield~加速度×AI で橋梁の異常をリアルタイム検出するエッジモニタ~(受賞者:須藤 義明氏)」、「RescueBot(同:Supun Navoda Gamlath氏、Shamila Jeewantha氏、Chathura Gunasekara氏)」、「自己進化するLoRa通信ライブラリ「LoRabbit」(同:久保寺 祐一氏)」、「μT-Kernel × AIの学習環境~ライントレースロボットでリアルタイムOS・AIを学び、体験する~(同:阿部 耕二氏)」の4件をはじめ、入賞2件、激励賞5件の合計11作品が選ばれました。

受賞作品

RTOSアプリケーション一般部門

受賞者

作品名

概要

優秀賞

須藤 義明

LGX-Shield~加速度×AI で橋梁の異常をリアルタイム検出するエッジモニタ~

橋梁など社会インフラの”揺れ”を計測し、AIが安全/危険を即時に判定する小型モニタリング装置。

入賞

森 龍二

μT-Kernel搭載ウェアラブル動作解析ツール

腕に装着して動きを読み取り、お手本との違いをその場でLED表示する動作解析デバイス

入賞

渋川 敬之

AMAGOI環境データ推論システム

環境センサから取得した観測データをもとに一定期間後の気象状態を予測して出力するシステム

激励賞

関谷 武一郎

危険予知を支援するシステム

障害物との距離、気象条件及び地理座標から現在地を予測し、衝突を回避するシステム

激励賞

湯澤 竜也

micro:bit de TinyML♪

エッジノードAI「TinyML」をmicrobit+μT-Kernel 3.0環境で実行させるためのPorting Layer

RTOSアプリケーション学生部門

受賞者

作品名

概要

優秀賞

Supun Navoda Gamlath /

Shamila Jeewantha /

Chathura Gunasekara

RescueBot

自律型災害生存者検出用リアルタイムオンデバイスAIフレームワーク

激励賞

Adarsh A /

Aayush S /

Asrith S /

Adithya A

Visual Inertial SLAM

ボード内蔵のNPUを活用し「人工の合成LiDAR」データを生成するシステム

激励賞

Kariuki Samuel Kiragu /

Feng Zuocheng

PROTOTYPE STRESS BALL BASED ON THE TRON RTOS WITH AI INTEGRATION

触覚センシングと組込み機械学習を統合した「スマートストレス管理ボール」

RTOSミドルウェア部門

受賞者

作品名

概要

優秀賞

久保寺 祐一

自己進化するLoRa通信ライブラリ「LoRabbit」

複雑な設定や大容量データ転送が困難なLoRa通信を、μT-Kernel 3.0とAIの力で解決するLoRa通信ライブラリ

激励賞本谷 茂よりどり組込み機器でAIを動かす際に必要となるハード的入力と出力結果の解釈を支援するライブラリ
開発環境・開発ツール部門

受賞者

作品名

概要

優秀賞

阿部 耕二

μT-Kernel × AIの学習環境

~ライントレースロボットでリアルタイムOS・AIを学び、体験する~

micro:bitを用いたライントレースロボットを題材にμT-Kernel、エッジAIを学べる学習環境

(※敬称略)

講評

坂村審査員長は、以下のように各作品に関する講評を述べています。

今年のTRONプログラミングコンテストは、「TRON×AI AIの活用」というテーマのもと、リアルタイムOSとAIという、一見すると距離のある両者をどのように結びつけ、実装へと落とし込むかが試される、非常に挑戦的なコンテストとなりました。結果として、国内外から意欲的かつ創意工夫に満ちた作品が多数寄せられました。

まず、RTOSアプリケーション一般部門の「LGX-Shield~加速度×AI で橋梁の異常をリアルタイム検出するエッジモニタ~」は、加速度センサとAIを組み合わせ、橋梁の異常をエッジ側で即座に検出するという、社会インフラに直結する明確な目的を持つ優れた作品でした。FFT 解析から特徴抽出、推論処理までをリアルタイムに実装し、さらに独自のデバイスドライバやネットワーク処理まで踏み込んでいる点は、組込み技術として非常に高く評価できる内容です。

またRTOSミドルウェア部門の「自己進化する LoRa 通信ライブラリ『LoRabbit』」は、LoRa 通信とAIを融合し、自己最適化する通信ライブラリとして完成度が高く、μT-Kernelの特性を最大限に引き出している点が印象的でした。

一方、micro:bitを使った作品群にも大きな可能性を感じました。非力なハードウェアでありながらも、携帯性や低消費電力といった強みを活かし、天候予測や動作解析、TinyML の移植といった工夫ある取り組みが多く見られました。特に「μT-Kernel×AI の学習環境 ~ライントレースロボットでリアルタイムOS・AI を学び、体験する~」や「μT-Kernel 搭載ウェアラブル動作解析ツール」は、教育的価値が高く、将来のエンジニア育成にもつながる好例といえます。

海外応募作品においても、YOLO による人検出やSLAMといった先端技術への挑戦が見られ、

TRON RTOSとAIの可能性が国境を越えて広がっていることを実感しました。ただし、中にはアイデアが先行し、実装が間に合わなかったものや、AIの活用意図がやや曖昧な作品も見受けられました。AIとリアルタイム組込み制御の両方を扱うには、相応の設計力と計画性が求められます。ぜひ今回の経験を次につなげ、より完成度の高い作品として再挑戦していただきたいと思います。

開催概要

主催トロンフォーラム
特別協力STマイクロエレクトロニクス株式会社、ルネサス エレクトロニクス株式会社
技術協賛IEEE Consumer Technology Society West Japan Joint Chapter
協力INIAD cHUB(東洋大学情報連携学 学術実業連携機構)、インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社、パーソナルメディア株式会社、ユーシーテクノロジ株式会社、一般社団法人組込みシステム技術協会
開催期間エントリー期間:2025年1月21日-2025年4月30日
応募期間: 2025年5月30日-2025年9月30日
表彰式: 2025年12月11日
審査員長坂村 健
審査員後藤 貴志:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社
パオロ・オテリ:STマイクロエレクトロニクス株式会社
黒田 昭宏:ルネサス エレクトロニクス株式会社
松為 彰:パーソナルメディア株式会社
公式webhttps://www.tron.org/ja/programming_contest-2025/

以上

集合写真表彰式の様子

お問い合わせ先

トロンフォーラム事務局
担当:柏・山田
電話:03-5437-0572
Email:press@tron.org

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