T-Kernel共通規定

データ型

汎用的なデータ型

typedef signed char          B;     /* 符号付き  8ビット整数 */
typedef signed short         H;     /* 符号付き 16ビット整数 */
typedef signed long          W;     /* 符号付き 32ビット整数 */
typedef signed long long     D;     /* 符号付き 64ビット整数 */
typedef unsigned char       UB;     /* 符号無し  8ビット整数 */
typedef unsigned short      UH;     /* 符号無し 16ビット整数 */
typedef unsigned long       UW;     /* 符号無し 32ビット整数 */
typedef unsigned long long  UD;     /* 符号無し 64ビット整数 */

typedef char                VB;     /* 型が一定しない  8ビットのデータ */
typedef short               VH;     /* 型が一定しない 16ビットのデータ */
typedef long                VW;     /* 型が一定しない 32ビットのデータ */
typedef long long           VD;     /* 型が一定しない 64ビットのデータ */
typedef void                *VP;    /* 型が一定しないデータへのポインタ */

typedef volatile B          _B;     /* volatile 宣言付 */
typedef volatile H          _H;
typedef volatile W          _W;
typedef volatile D          _D;
typedef volatile UB         _UB;
typedef volatile UH         _UH;
typedef volatile UW         _UW;
typedef volatile UD         _UD;

typedef signed int          INT;    /* プロセッサのビット幅の符号付き整数、32ビット以上 */
typedef unsigned int        UINT;   /* プロセッサのビット幅の符号無し整数、32ビット以上 */

typedef INT                 ID;     /* ID一般 */
typedef W                   MSEC;   /* 時間一般(ミリ秒) */

typedef void            (*FP)();    /* 関数アドレス一般 */
typedef INT             (*FUNCP)(); /* 関数アドレス一般 */

#define LOCAL           static      /* ローカルシンボル定義 */
#define EXPORT                      /* グローバルシンボル定義 */
#define IMPORT          extern      /* グローバルシンボル参照 */

/*
 * ブール値
 *      TRUE = 1 と定義するが、0 以外はすべて真(TRUE)である。
 *      したがって、bool == TRUE の様な判定をしてはいけない。
 *      bool != FALSE の様に判定すること。
 */
typedef INT             BOOL;
#define TRUE            1           /* 真 */
#define FALSE           0           /* 偽 */

/*
 * TRON 文字コード
 */
typedef UH              TC;         /* TRON 文字コード */
#define TNULL           ((TC)0)     /* TRON コード文字列の終端 */

注意

  • VB, VH, VW, VDと B, H, W, Dとの違いは、前者はビット数のみが分かっており、データ型の中身が分からないものを表すのに対して、後者は整数を表すことがはっきりしているという点である。

  • プロセッサのビット幅は32ビット以上に限定する。したがって、INT, UINTは必ず32ビット以上の幅がある。

  • BOOLは、TRUE を1と定義するが、0以外はすべて真である。したがって、ブール値 == TRUE の様な判定を行ってはいけない。ブール値 != FALSE の様に判定する。

注意補足事項
 

stksz, wupcnt, メッセージサイズなど、明らかに負の数にならないパラメータも、原則として符号付き整数(INT)のデータ型となっている。これは、整数はできるだけ符号付きの数として扱うというTRON全般のルールに基づいたものである。また、タイムアウト(TMO tmout)のパラメータでは、これが符号付きの整数であることを利用し、TMO_FEVR(= -1) を特殊な意味に使っている。符号無しのデータ型を持つパラメータは、ビットパターンとして扱われるもの(オブジェクト属性やイベントフラグなど)である。

注意T-Kernel 1.0との差異
 

  • 64ビットのD, UDを追加した。'D'は Double integer の意味である。また、符号付き整数の宣言にsignedを追加した。W, UWが32ビットであることを明確にするため、intからlongに変更した。

  • T-Kernel 1.0のMSECはINT(プロセッサのビット幅の整数)だったが、T-Kernel 2.0のMSECはW(32ビット固定)に変更した。これは、μT-Kernelの仕様書からフィードバックする形で、INTが16ビットになった場合に不都合な部分をW(32ビット固定)としたことによる。

  • T-Kernel 1.0では exinf などのデータタイプをVPとしていたが、T-Kernel 2.0では、CONST修飾子との関係から、原則としてVPは使わず、VPの代わりに"void *"のデータタイプ定義を直接書くことにした。T-Kernel 2.0でも、互換性維持のためにVP自体の定義は残しているが、VPの新規の使用は推奨しない。

意味が定義されているデータ型

パラメータの意味を明確にするため、出現頻度の高いデータ型や特殊な意味を持つデータ型に対して、以下のような名称を使用する。

typedef INT             FN;             /* 機能コード */
typedef INT             RNO;            /* ランデブ番号 */
typedef UW              ATR;            /* オブジェクト/ハンドラ属性 */
typedef INT             ER;             /* エラーコード */
typedef INT             PRI;            /* 優先度 */
typedef W               TMO;            /* ミリ秒単位のタイムアウト指定 */
typedef D               TMO_U;          /* 64ビットでマイクロ秒単位のタイムアウト指定 */
typedef UW              RELTIM;         /* ミリ秒単位の相対時間 */
typedef UD              RELTIM_U;       /* 64ビットでマイクロ秒単位の相対時間 */

typedef struct systim {                 /* ミリ秒単位のシステム時刻 */
        W       hi;                     /* 上位32ビット */
        UW      lo;                     /* 下位32ビット */
} SYSTIM;

typedef D               SYSTIM_U;       /* 64ビットでマイクロ秒単位のシステム時刻 */

/*
 * 共通定数
 */
#define NULL            0               /* 無効ポインタ */
#define TA_NULL         0               /* 特別な属性を指定しない */
#define TMO_POL         0               /* ポーリング */
#define TMO_FEVR        (-1)            /* 永久待ち */

注意

  • 複数のデータ型を複合したデータ型の場合は、その内の最も主となるデータ型で代表する。例えば、tk_cre_tsk の戻値はタスクIDかエラーコードであるが、主となるのはタスクIDなので、データ型はIDとなる。

注意T-Kernel 1.0との差異
 

64ビットでマイクロ秒単位のタイムアウト指定を示すTMO_U、64ビットでマイクロ秒単位の相対時間を示すRELTIM_U、64ビットでマイクロ秒単位のシステム時刻を示すSYSTIM_Uを追加した。RELTIM_UはRELTIMに合わせて符号無し、SYSTIM_UはSYSTIMに合わせて符号付きである。また、SYSTIMは32ビットのメンバを2つ合わせた構造体であるが、SYSTIM_Uは64ビットデータの利便性を直接活かす形で、構造体ではない通常の64ビット整数となっている。

ミリ秒単位のタイムアウト指定を示すTMOは、T-Kernel 1.0ではINTだったが、T-Kernel 2.0ではWに変更した。また、オブジェクト属性などを示すATRおよびミリ秒単位の相対時間を示すRELTIMは、T-Kernel 1.0ではUINTだったが、T-Kernel 2.0ではUWに変更した。

注意補足事項
 

マイクロ秒(μsec)を意味するパラメータやデータタイプには最後に"_u"(uはμの意味) または"_U"を付け、それ以外の64ビット整数を意味するパラメータやデータタイプには最後に"_d"(dは double integer の意味)または"_D"を付ける方針としている。TMO_U, RELTIM_U, SYSTIM_Uはこの方針によるデータタイプ名である。