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あらゆる物の中に超小型チップ(コンピュータやメモリ)が入り、それら超小型チップの入った物同志が互いに情報交換して快適性、利便性、安全性を我々に与えることを目的とするシステムがユビキタス・コンピューティングシステムである。ユビキタスという言葉は、最近日本でもまた、世界的にも認知されるようになってきた。TRONプロジェクトは、1984年からユビキタス(ubiquitous)単語は使っていなかったが「どこでもコンピュータ」あるいは「超機能分散システム」という名称でそのコンセプトを提唱し研究を進めてきた。プロジェクトの最終ターゲットは「超機能分散システム」であり、そのパーツとなるCPU、オペレーティングシステム、セキュリティアーキテクチャや応用分野の研究を蓄積してきた。そして21世紀の半導体技術、情報通
信技術がユビキタス・コンピューティングシステムをいよいよ現実のものにならしめようとしている。
2001年末のTRONSHOW2002でユビキタス・コンピューティングシステム−−どこでもコンピュータのノードとなるコンピュータを短期間で効率良く、しかも高品質な製品を開発するためのオープンなプラットフォームT-Engine(ティー・エンジン)を発表した。T-Engineは、標準T-Engine、μ
T-Engine(マイクロ・ティー・エンジン)、nT-Engine(ナノ・ティー・エンジン)、pT-Engine(ピコ・ティー・エンジン)というようなシリーズ化がされており適用範囲向けに各仕様が作られている。標準T-Engineは、主に人が操作をするユーザー・インタフェースを持った端末向け、μ
T-Engineは人による操作の少ない機器向け、nT-Engineはセンサーネットワークや機器制御向け、pT-Engineは非能動的な物(つまり机、壁、額縁といった直接コンビュータに接続できないようなもの)につけるノード向けである。これらのT-Engineシリーズを組み合わせることで、ユビキタス・コンピューティング環境を構成していく。そしてその環境の中でヒューマン・マシンインタフェースを担うマシンが、ユビキタスコンピューティング環境における応用面
からさらに深い考察をして作り上げた今までにないマシン−−ユビキタス・コミュニケータ(Ubiquitous
Communicator 省略してUCとも呼ぶ)である。
ユビキタス・コミュニケータは一言で言うと「ユビキタス・コンピューティング環境と会話するための道具」である。具体的には
(1)物とのコミュニケーション
(2)環境とのコミュニケーション
(3)人とのコミュニケーション
の三つのコミュニケーションである。
「物」にはそれらの個体を識別するための電子タグやバーコードがつけられている。個体識別
に用いられる固有ID(物に一つ一つに対応してただ一つしかない。つまり同じコードは一つしかない)をucode(ユーコード)と呼ぶ。ucodeはT-Engineの規格推進団体であるT-Engineフォーラム内に設置したユビキタスIDセンターが定めた形式の固有IDである。この規格を満たすには128bit以上のIDを表現することのできる、バーコード、RFIDが必要である。さらにコンピュータや暗号処理機能などを備えた電子タグ、サーバーの形態をしたucode装置なども定義されている。ucodeタグがつけられた「物」のucodeをもとに「物」についてのプロフィールや履歴情報を得られるようになる。ユビキタスIDセンターのサーバーがucodeからその情報の格納されているアドレスを保持している。図1のように、「物」につけられた電子タグのucodeをUCが読み、ユビキタスIDセンターにそれを送る。すると「物」につけられた情報を持つサーバー(コンテンツ・サーバー)のアドレスがUCに返される。そして「物」についての情報をコンテンツ・サーバーから得てUCに表示するという仕組みである。この仕組みを使うことにより、ボールペンのucodeから、その製品や替え芯をオーダーできる画面
が出てUCから直接注文することができる、大根につけられたタグを読むと、千葉県産、有機栽培でつくられたという情報に加え、生産者が「丹精をこめてつくりました。おいしいよ」というようなストリーミングデータをビデオ画像の形でUCから見ることもできるようになる。これがUCの「物とのコミュニケーション」の機能である。
UCはセンサーの情報を収集し環境や状況を認識する。また、設備機器や家電などを制御するリモコンの役割を果
たす。これらの機能はnT-Engineによるセンサー/制御ネットワークとの連携により実現される。状況や環境を認識してその時必要な画面
や機能を果たすことを「状況認識(context awareness)」と呼ぶが、たとえば赤外線信号発生装置をそれぞれの場所に設置し、そのエリアにUCが来ると赤外線信号を読み取り、表示する内容を変えることができる。レストランのテーブルにつくとメニューが表示されるとか、売り場のコーナーによりお進め商品を表示するということができる。
UCは携帯テレビ電話として機能することができる。通信回線としてはPHSやIP電話などが利用可能である。もちろん携帯電話キャリアと連携すればいわゆる携帯電話ともなり得る。さらに、チューナを組み込めば、モバイル衛星放送やデジタル放送などの受信機ともなる。そのベースとなる高品位
で性能高い画像、音声を処理する機能をUCは備えている。
以上のような3つのコミュニケーション機能を持つ機器がユビキタス・コミュニケータ(UC)である。YRPユビキタス・ネットワーキング研究所(UNL)ではUCの開発実験機を2002年に開発し研究を進めてきた。その後さらに実用的な大きさにし、必要な機能を盛り込むためにASICを開発した。このASICを組込みさらに進化したUCを2003年10月に発表した。大きさは、幅75×高さ120×厚み17.6mm、重さ175gと非常にコンパクトである。ASICの開発により初代機に比べ、大幅な性能向上を実現する一方大きさは1/3程度にまで凝縮した。今回開発したASICの機能によりビデオ画像はMPEG4で30フレーム/秒で再生できるため非常にスムースで、映画やDVDなどのクリップの再生にも全く遜色ない。UCにはucodeタグを読むマルチリーダを搭載している。ucode対応の二次元バーコードはUCのカメラで読み取り画像認識によりコードを得る。電子タグは13.56MHzと2.45GHzの両方が読めるマルチバンドアンテナを開発しUCの裏面
側に搭載している。UHF帯(900MHz付近の周波数帯)は日本の電波法で許可されていないため現在利用できないが、マルチバンドアンテナとして技術的に付加することが可能である。UC自体がeTRONとして振る舞うことができ、電子チケットや電子マネーなどの代わりに利用できる。UCは読み取ったucodeをもとにユビキタスIDセンターやコンテンツサーバーと交信する必要がある。このため、UCは複数の通
信路を持っている。赤外線通信、Bluetooth、無線LAN、PHSなどが利用可能で拡張スロットにより入れ換えや新規方式の通
信にも対応できる。また、UCにはバイオメトリクスによるロックがかけられるようになっている。今回のモデルではスウィープ型の指紋認証機能を搭載している。UCは有価値情報、個人情報を扱ったり、設備機器を操作する機能を持っているので手に持った誰でも自由に操作できては困る。このような本人認証機能がUCには必須機能である。
UNLでは2003年度中にASICのバージョンをさらに上げる計画があり、2004年度にはより完成度が高いモデルを登場させる予定である。我々は着々とユビキタスコンピューティング社会に近づきつつある。
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| 図1:ucodeのアドレス解決および情報参照のメカニズム |
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| 写真1:ユビキタスコミュニケータ |


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