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ユビキタスIDセンター(uIDセンター)は、ユビキタスID技術(uID技術)を実現するための中核機関として、2003年3月に設立された。これは、ユビキタスコンピューティング・ユビキタスネットワーキング技術の研究開発、標準化、普及を推進する、国際的な民間技術フォーラムで、1)uID技術の研究開発、2)uID技術の運用、実験、3)ユビキタスID空間の割り当て、4)ユビキタスID解決サーバーの運用、5)セキュア通
信のための認証局の運営等の活動を行う。
現在、uIDセンターは、組込み型リアルタイムシステム・アーキテクチャの標準化を行っているT-Engineフォーラムと一体化した活動を行っている。フォーラムメンバーには、世界各国の280社あまりの企業等が参加し、共同研究開発をしている。
1.1 オープンな活動
uIDセンターの活動内容はオープンであり、研究開発成果は一般に公開される。基盤システムもオープンかつマルチベンダーで構築し、uIDセンターが公開した仕様や基準を満たす製品は、すべてuIDセンター標準機器として認定する方針である。
1.2 ローカリティーの重視
ITが社会にスムーズに浸透するためには、それが対象とする社会や文化と整合していることが不可欠である。特に「ユビキタス」は実世界と密な応用を対象としており、この整合性はより重要である。uIDセンターは、社会や文化の局所性(ローカリティー)を重視したシステムを目指している。
例えば、RFIDの通信電波帯域は、適用する場所の湿度や温度などの条件、更に電波法における規制、他の通
信機器との干渉といった局所的な事情に合致したものを使う。また、システムのプライバシー保護の強度に関しても、対象とする社会におけるプライバシー意識を十分に考慮して、システムや技術をカスタマイズする。
1.3 一般消費者も含めた広い応用分野の開拓
ユビキタス技術はあらゆる産業分野で有用な技術である。従って、uIDセンターは、単に業務用の特殊用途のシステムを構築するのではなく、一般
消費者も含めた幅広い民生利用が行われるように、広い応用分野を開拓することをユビキタス技術の普及戦略としている。
1.4 技術力を背景とした新しい応用やメカニズムの開拓
uIDセンターは、小さいデバイスや小型電子機器においては、世界的に最先端の技術を有している。我々は、こうした高度な技術力を十分に活用した応用開発や技術開発を積極的に展開する。
1.5 セキュリティー・プライバシーの重視
ユビキタスコンピューティング環境では、生活空間のあらゆるところに小型チップを埋め込んで、実世界情報の自動認識を試みる。従って、自動認識された個人情報が漏洩し、更にこれが悪用される可能性もないとは言えない。そこで、uIDセンターでは、ユビキタス環境におけるセキュリティー、プライバシー保護を可能にする技術開発に力を入れている。その上で、実現コストや提供サービスの利便性との間のトレードオフを考慮した上で、技術的限界も明らかにし、それをカバーするための社会制度をセキュリティーポリシーとして確立する。
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2.ユビキタスID技術−ユビキタスIDセンターが実現する技術
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ユビキタスコンピューティング環境では、身の回りの様々なモノに、通
信機能を持ったRFIDやセンサーなどのノードが埋め込まれる 。これらは、モノの情報や測定情報等、現実世界の属性情報を格納し、人間が携帯したり建物に設置されたコンピュータに対して、格納情報や観測情報を送信する。この現実世界の情報を使って、情報提供サービスや現実世界の環境制御などを行う。
2.1 ユビキタス情報サービスアーキテクチャ
図1はユビキタスコンピューティング環境のアーキテクチャの概要である。実世界のあらゆるモノには、RFIDやセンサーなどから構成されたユビキタスコードタグ(ucodeタグ)が埋め込まれる。ucodeタグは、そのモノに関する情報を格納するが、現状のタグには記憶容量
等の制約があり、必ずしも全ての情報を格納できるとは限らない。そこで、ucodeタグにはモノを識別
するためのコード(ユビキタスコード:ucode)を格納した上で、容量の範囲内で付加的な属性情報も格納する。ucodeタグに格納できない情報は、ネットワークを介した先のデータベースに格納する。
ucodeタグから情報を獲得する端末を、ユビキタスコミュニケータ(UC)と呼ぶ。UCは、獲得したucodeに応じて情報サーバにアクセスして情報サービスを受ける。ユビキタスコンピューティング環境では、実世界にばら撒かれたucodeタグや情報サーバーは膨大であるため、ucode解決サーバーと呼ぶ分散ディレクトリデータベースが、ucodeと情報サーバーの対応関係を保持する。これは、ucodeタグに格納された情報があらわす現実世界と、情報サーバー上の仮想世界の間の橋渡しをする重要な基幹システムである。
また、ユビキタスID技術での通信は、プライバシーを配慮したセキュアな通
信を行うために、公開鍵暗号技術を使い、そのための認証局が必要になる。また、ucodeタグがつけられたモノが一般
に流出したときにも、悪意ある者が不正にその情報を読み出せないように、ucodeタグの非接触通
信インタフェースでは特別な同定防止通信を備える。
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| 図1:ユビキタスIDアーキテクチャ |
2.2 ucode: Ubiquitous Code
ユビキタスコンピューティングでは、実世界の状態をコンピュータが自動的に認識し、それに応じてさまざまな情報処理や動作をする。そのためには、実世界のモノを識別
できることが不可欠である。そこで、ユビキタスID技術では、すべてのモノに対して固有の番号(ユビキタスコード:ucode)を付与する。このucodeは128
bitを基本として、更に256 bit、384 bitと、128bit単位で拡張できる枠組みを備えている。
ucodeの重要な特長は、既存のコード体系との互換性である。例えば、既存の代表的なコード体系には、UPC、EAN、JAN、ISBN、ISSNコード、IPアドレス、電話番号等などがある。ucodeの128ビットという広大な空間を利用し、既存のコード体系を包含できるメタコード体系である。
2.3 ucodeタグ
ucodeを使った情報サービスの実現には、「モノ」に対してucodeを結びつけるメカニズムが必要である。ユビキタスID技術では、この「モノ」にucodeを付与する装置を、ucodeタグと呼ぶ。現在このucodeタグとして利用可能なデバイスの中の1つである非接触通
信機能をもったRFIDが世界的に注目されている。ユビキタスIDセンターではRFIDをucodeタグの重要なデバイスとして扱うが、RFIDだけに限定せず様々なucodeタグを使う。例えば、最も安価なものとして、ucodeを標記してモノに貼ったバーコードを用いる。より安全なものとして、暗号認証通
信機能を備えたスマートカードも用いる。ユビキタスIDセンターでは、ucodeの用途や応用の要求に応じて、表1に示すように、様々なucodeタグが選択できる枠組みを提供している。しばしばRFIDというと、バーコードを代替するものとして位
置づけられることが多い。ところが、ユビキタスIDセンターでは、バーコードとRFIDは共存し、それぞれの利害得失に応じて使い分けるべきものであると考えている。
RFIDに関しても単一種類に限定するのではなく、構造が簡易で安価なものから、高機能で高価なものまでを包含する。また、非接触通
信部分における電波周波数も複数サポートし、適用される条件に応じて使い分ける。すでに、標準ucodeタグとして、複数のタグが認定されている(図2)。
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表1:ucodeタグ体系
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クラス
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内容
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Class 0:光学的IDタグ
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光学的手段により読み取り可能なタグ、バーコードや二次元バーコードなどがある
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Class 1:下位RFIDタグ
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格納情報が読出しだけに限定された非接触通
信を行うRFID
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Class 2:上位RFIDタグ
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格納情報が変更可能な非接触通
信を行うRFID
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Class 3:下位スマートタグ
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CPU、暗号コプロセッサ等の計算能力を備え、非接触通
信を行うスマートカードレベルのタグ、暗号認証機能は秘密鍵暗号レベル
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Class 4:上位スマートタグ
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CPU、暗号コプロセッサ等の計算能力を備え、非接触通
信を行うスマートカードレベルのタグ、暗号認証機能は公開鍵暗号レベル
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Class 5:下位アクティブタグ
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電源を内蔵し外部からの電源供給をうけずに動作できる、RFIIDやセンサーレベルのノード、CPUは備えず、計算能力はない
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Class 6:上位アクティブタグ
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電源を内蔵し外部からの電源供給をうけずに動作できる、CPUを搭載した計算能力のある小型コンピュータノード
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Class 7:セキュリティーボックス
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大容量のデータを格納し、安全で強固なコンピュータノード。耐タンパー仕様の筐体、有線型のネットワーク通
信機能、セキュア通信プ ロトコルとしてeTPを備える
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Class 8:セキュリティーサーバー
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大容量のデータを格納し、安全で強固なコンピュータノード。Class
7の機能に加え、厳密な保安手続きにより運用されているもの
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Class 1:μChip
[日立製作所] |
Class 1:T-Junction
[凸版印刷 ] |
Class 4:AE45X (eTRON)
[ルネサステクノロジー、東大、他] |
| 図2:uIDセンター認定ucodeタグ(2003年8月現在) |
2.4 ユビキタスコミュニケーター
ユビキタスコミュニケータ(UC)は、ユビキタスコンピューティング環境とユーザの間のコミュニケーションを媒介する端末である。ucodeタグとの通
信や、ユビキタス情報サービスを提供する様々なサーバー群、更にその環境に存在する他のユーザとの間で、以下の通
信機能を提供する(図3)。
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| ucodeタグから情報を非接触通
信により情報受信 |
受信情報に基づき、同じペンを購入する情報サービスの例 |
| 図3:ユビキタスコミュニケータを使ったユビキタス情報サービスの例 |
● 狭域通信機能
主にucodeタグとの間の通信機能のことで、RFID読取機能、ICカードインタフェース、バーコード読取機構などが含まれる。
● 広域通信機能
ucodeを付与された「モノ」の情報や、更にその「モノ」に関する付加サービスを
受けるために、広域通信網に接続するために通信機能。無線LANやBluetooth、Ethernet、PHS、PDCなどへの通
信インタフェースがある。
2.5 ucode解決サーバー
ucode解決サーバーは、ucodeからそのucodeに関連する情報サービスを提供する情報サーバのアドレスの対応を格納した、広域分散型のディレクトリデータベースである。いわば、ucode解決サーバーは、ucodeがあらわす「現実世界」と、情報システム内の電子的な「仮想世界」をつなぐシステムであり、ユビキタスID技術の中で重要な基幹システムである。
2.6 プライバシー保護技術
あらゆるものに、RFIDのようなタグがつけられることによって、プライバシの観点から次の問題点が指摘されている。まず、意図しない人によるRFIDの格納情報を読み出しや、各サービスを実現する通
信を盗聴することによるプライバシー情報の流出。また、RFIDとそのR/W機器の遍在化により、RFIDがついたモノを携帯する人のトラッキング可能性である。
ユビキタスID技術では、前者の問題に対して、ユビキタスコンピューティング環境に向いた、暗号認証通
信技術、eTRON (Entity TRON)を提供している、また、後者のトラッキング問題を解決するために、不特定の人が、非接触通
信を通してRFIDの同定ができないような、同定防止通信プロトコルを開発している。uIDセンターの標準タグ仕様では、この同定防止通
信プロトコルのサポートは必須である。
こうしたユビキタスID技術は、様々な分野への適用が期待されている。ユビキタスIDセンターでは、EAP(Experimental
Activity Process)という様々な応用の実証実験を行うためのプロセスをオープンしている。
3.1 食品トレーサビリティ
近年、BSE問題の顕在化などにより、食品の安全性確保が国民的な課題となっている。食品の生産履歴、流通
履歴を正確に把握し、その情報を消費者がトレースできること、食品事故が発生した時にも、その原因の特定後、速やかに被害範囲を特定するトラッキングへの要求が高い。そこで、このucodeタグを食品につけて(図4)、流通
販売することで、農産物の流通を高度化しようとしている。またその実現のためには、生産者が、きちんと生産履歴を記録、管理するための、生産活動の支援でもユビキタスID技術を使っている(図5)。
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| 図5:生産管理のために「ユビキタス」化された畑 |
3.2 医薬品
血液製剤を通じたAIDS感染の問題から、医薬品に関しても食品同様のトレーサビリティやトラッキングが必須であり、すでに薬事法で義務付けられたものもある。こうした処理の支援にもユビキタスID技術の適用を試行している。
3.3 デジタルミュージアム
博物館や美術館、各種製品ショーなどの展示会においても、ユビキタスID技術は有用である。展示物それぞれにucodeタグをつけ、来館者が携帯するUCでそのタグ情報を読みとり、その展示物に関する情報を検索して表示するような展示ガイドが作ることができる。また、来館者にもucodeタグを持たせ、その行動を把握することによって、順路案内をすることができる。


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