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"T-Engine"(ティー・エンジン)は、規格化されたハードウェア(T-Engine)と標準リアルタイムカーネル(T-Kernel)からなる組込みシステムのオープンな標準プラットフォームでである。そのアーキテクチャの最大の目標は、MPUアーキテクチャから独立で、T-Kernel上に作られたミドルウェアをMPUアーキテクチャによらず流通
させることである。
T-Engineは携帯情報機器やネットワーク接続型の家電機器などのいわゆる組込みシステムを効率良く短期間で開発するために最適なアーキテクチャとして設計されている。さらに、T-Engineはネットワーク常時接続が前提である。そこで、eTRON
と呼ぶ、TRONプロジェクトのセキュリティアーキテクチャに対応し、セキュリティ状況が悪いネットワークを経由しても盗聴、改竄、なりすましから防御し、安全に電子情報を送ることができる。
T-Engineは半導体メーカー、ハードウェアメーカー、ソフトウェアメーカー、システムメーカーの連携を円滑にし、相互のビジネスを活発化し、開発期間や開発コストの低減により付加価値の高い製品を短期間で提供することができる。T-Engineは高度な半導体技術や実装技術、ソフトウェア技術を採用し、他の追随を許さない先進的な応用製品の開発を行うことができる。
その究極的に目指すところは、あらゆるものにコンピュータを入れ、ネットワークでつなぐユビキタス・コンピューティング環境の実現でである。T-Engineの開発には、すでにハードウェア/ソフトウェア/システムを開発する企業が数多く参画し、様々なT-Engineプラットフォームならびに応用システムが、既に製品化されている。さらにそれらの技術を利用するユーザ企業の参画により、T-Engineプラットフォームの利用、普及も拡大している。
2.1 T-Engine
T-Engineはユビキタス・コンピューティング環境を構成するハードウェアの規格である。適用する応用の範囲に応じ、4種類ある(図1)。
1. 標準T-Engine(標準ティ・エンジン)
2. μT-Engine(マイクロ・ティ・エンジン)
携帯情報機器や家電機器や計装機器など主に機器制御を行うためのプラットフォーム。
標準T-Engineが75mm×120mm、μT-Engineが60mm×85mm
3. nT-Engine(ナノ・ティ・エンジン)
小型家電機器やセンサー等に適用するための、コイン大の機器プラットフォーム
4. pT-Engine(ピコ・ティ・エンジン)
照明器具、スイッチ、センサー、錠、バルブなど、ユビキタス・コンピューティング環境の最小単位
に適用する機器のためのプラットフォーム
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標準T-Engine
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μT-Engine
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nT-Engine
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pT-Engine
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図1
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2.2 T-Kernel
T-Kernelは、標準T-Engine、μT-Engine上で動作する、標準リアルタイムカーネル(基本ソフトウェア)である(図2参照)。T-KernelはTRONプロジェクトで20年にわたって培われたITRONカーネルの技術が投入されている。
T-Kernelの利点は、第一に外部入力に対する高い応答性能(リアルタイム性能)である。第二に、動的な資源管理機能やシングルソース原則を堅持することにより、T-Kernel上に構築されるミドルウェアやアプリケーションソフトウェアの高い互換性が実現され、組込み分野においても、大量
のソフトウェアが流通できることである。
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図2
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(1)T-Monitor(ティ・モニタ)
OSの起動やデバッグを行うためのモニタソフトウェアである。仕様が定義され、開発環境とのインタフェースを取る。
(2)T-Kernel(ティ・カーネル)
T-Engine用のリアルタイムカーネルである。T-Kernelを核として、更に高度な機能を提供するOS拡張部として、「ネイティブ拡張部」(Native
Extension)と「移植拡張部」(Ported Extension)がある。ネイティブ拡張部には、T-Engineフォーラムが標準化したカーネル拡張部で、以下の3種類がある。
1. T-Kernel/TE: Tiny Extension
小規模の組込みシステムを構築するためのカーネル拡張。特に、既存のリアルタイムカーネル上のミドルウェアの移植ターゲットとして機能する。
2. T-Kernel/SE: Standard Extension
ファイルシステムや論理多重空間を持つメモリ管理、プロセス管理、プロセス間の同期通
信機能など、比較的高機能な組み込み・リアルタイムシステム向けの拡張機能を提供する。
3. T-Kernel/EE: Enterprise Extension
T-Engineをサーバーとして用いるためのカーネル拡張。セキュアOSの機能を提供する。
移植拡張部は、既存のミドルウェアやカーネルをT-Kernel上に移植したものである。現在、以下の移植拡張部が開発された、または開発中である。
1. Windows CE .NET/T-Kernel
T-Kernel上で動作する、Windows CE .NETカーネル
2. T-Wireless
T-Kernel上で動作する、第三世代携帯電話のためのミドルウェア群
3. T-Java
T-Kernel上で動作する、Java言語の実行環境
4. T-Linux
T-Kernel上で動作するLinuxカーネル
5. T-Integrator
NexWave社の情報家電用基本ソフトウェアNSIをT-Kernel上で動作させたもの
(3)デバイスドライバ
T-Engineの機器毎のハードウェアの差異を吸収するソフトウェアである。T-Engine上に標準搭載されるドライバに関しては、標準APIが規定されている。また、各応用に応じて新しいデバイスや専用デバイスのドライバを容易に開発できるように、デバイスドライバのリファレンスコードも公開する。
(4)ミドルウェア
T-Kernel上で動作する、各種ミドルウェアである。各種ネットワーク用のプロトコルスタック、ファイルシステム、日本語処理、かな漢字変換、eTRON関連のセキュリティソフトウェア、GUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)、音声処理、Javaなどさまざまなものが用意され、これらを組み合わせて利用することにより、短期間で安定した製品開発が可能となる。ミドルウェアの流通
を促進するために、利用や組み合わせが可能なミドルウェアの情報をT-Engineプロジェクトのデータベースで一括管理し、広く公開する(T-Dist)。このシステムにより、T-Engine上のソフトウェアの流通
を強力にサポートし、将来的にはeTRONを用いたソフトウェア課金システムとも連動させる。
(5)開発環境
T-Engineアーキテクチャでは、開発環境は標準化しない。しかし、ソフトウェアの流通
性を確保するために、ソースコードやバイナリーコードの標準形式は定める必要がある。そこで、ソースコードやオブジェクトコードの形式はgccが扱うものを基準とした。この形式が扱えるものであれば、どの開発環境でも利用できる。
(6)T-Kernelと他OSとのハイブリッド化機構:T-Bus
既に市場には、様々な分野で様々な基本ソフトウェア(カーネル等)があり、その上に多くのソフトウェア資産が形成されている。T-Kernelの上でこれらのソフトウェア資産を利用するために、"T-Bus"(ティ・バス)をいうメカニズムを提供する。これを使うと、既存の基本ソフトウェアとT-Kernelを、同じコンピュータ上で動作・協調させることができる。
(7)eTRON
TRONアーキテクチャにおける汎用的なセキュリティーアーキテクチャがeTRON(Entity
and Economy TRON)である。eTRONは、コンピュータ上で扱う価値のある情報、つまりそれは、偽造困難性、複製不能性、改竄困難性、携帯性などの特殊な性質を持ったデジタル情報、を実現するためのアーキテクチャである。我々は、こうしたデジタル情報を「電子実体」と呼び、これを実現するアーキテクチャとして「entity:実体」の「e」を取って「eTRON」とした。ユビキタスコンピューティング環境では、ネットワークの通
じてのクラッキングで家の中の状態をのぞかれたり、制御が乗っ取られる危険性がある。そのため、ユビキタスコンピューティング環境のすべての機器でどの機器の指示を受けるかとか、どこへ情報を送っていいかかといった制限を行う必要がある。T-Engine利用機器では、このようなアクセス管理情報をeTRONの「電子実体」として扱い、一般
の人にも設定できる容易性と強固なセキュリティ管理を実現する。
3.1 概要
T-Engineフォーラムは、T-Engineアーキテクチャの確立と、T-EngineやユビキタスID技術を用いたユビキタスコンピューティング環境の構築を目指し、研究開発や標準化、普及啓発活動、ユビキタスIDセンターの活動を行う、2002年7月に発足した国際的な技術フォーラムである(会長:坂村健・東京大学教授)。現在
、世界各国の企業や研究機関などから構成される会員数は約280以上(2003年11月28日現在)で、ユビキタス分野における世界最大のフォーラムとなっている。
3.2 内容
年に4回程度、全会員が参加する総会と、A会員によるテーマに応じたワーキンググループを随時開催することにより、
以下の内容を中心とした活動を行っている。
1. T-Engineアーキテクチャに関する研究開発及び標準化の調査研究
2. T-Engineアーキテクチャに関する普及活動・プロモーション
3. ユビキタス・コンピューティング環境構築に関する情報の収集、交換及び提供
4. ユビキタス・コンピューティング環境に関する関係機関との連絡調整
5. Webページ等を使ったT-Engineアーキテクチャに関する情報発信
6. eコマースを利用したT-Engineミドルウェアの流通基盤の実現
7. その他本会の目的を達成するために必要な事業
3.3 研究開発・標準化活動
T-Engineフォーラムにおける研究開発活動の中心として、A会員から構成される以下のワーキンググループを設置している。以下、各ワーキンググループの紹介と、今年度までの活動成果
の概要を述べる。
3.3.1 ハードウェアWG[HW-WG]
ハードウェアWGは、"T-Engine"(標準ティエンジン)、"μ
T-Engine"(マイクロティエンジン)、"nT-Engine"(ナノティエンジン)、"pT-Engine"(ピコティエンジン)といったT-Engineファミリーのハードウェア仕様をテーマとした活動を行う。
すでに、標準T-Engine、μT-Engine規格に基いたハードウェアが製品化されている。また、ユビキタスコミュニケータWGと連携して検討を進めたユビキタスコミュニケータのハードウェアの試作を完了した。現在nT-Engineのハードウェアの検討を進めている。
3.3.2 カーネル・開発環境WG [KD-WG]
カーネル・開発環境WGは、T-Engine上で動作する基本モニター"T-Monitor"、基本カーネル"T-Kernel"のソフトウェア仕様、及びT-Kernel上のアプリケーションソフトウェアやミドルウェアの開発環境をテーマとした活動を行う。
(1)T-Monitor、T-Kernelの仕様策定
T-Kernelの仕様策定を完了し、更にその仕様のメンテナンスを進めている。現在、T-Monitor
version 1.B0.01仕様、T-Kernel version 1.B0.02仕様が確定しており、仕様書として出版されている。国際的な利用のために、仕様書は日本語と英語の両方が用意されている。
(2)T-Kernelのオープンソース化
T-Engineフォーラムは、KD-WGで定めた仕様に基づいたT-Kernelの実装を、オープンソースソフトウェアとしてリリースする。T-Engineフォーラムは、T-Kernelをシングルソースソフトウェアとして統合して、ミドルウェアの移植性を確保する方針をとっている。2004年1月に、一般
に対してT-Kernelのソースコードをオープンする。このT-Kernelのオープンソース化によって、更に、「100年ソフト」という考え方に基づき、T-Kernelの仕様及び実装を、このオープンソース化のタイミングで基本的にフィックスする。また、KD-WGは、T-Kernelのオープンソースライセンスの検討を行い、ミドルウェア流通
の特性を保つためにシングルソースを堅持しつつ、組込み機器への適応化のための改変との間のバランスを保つためのライセンスとして、T-Licenseを構築した。
(3)T-Kernel/SE: Standard Extensionの仕様策定及びオープンソース化
T-Kernel/SEは、T-Kernelの上位におかれた、標準ミドルウェアで、ファイル管理、記憶管理、プロセス管理、イベント管理など、T-Kernelよりも抽象度の高い機能を提供する。T-Kernelの続き、T-Kernel/SE部分の仕様策定、及びその仕様に従ったオープンソースソフトウェアのリリースを目指している。
3.3.3 ミドルウェア流通WG [MW-WG]
ミドルウェアWGは、T-Kernel上で動作するミドルウェア流通をテーマとした活動を行う。ここで扱うミドルウェアには、ライブラリ、カーネルの拡張部分やユーザタスクとして実現されるマネージャ、デバイスドライバなどが含まれる。その活動は、主に流通
可能なミドルウェアの枠組みの構築、ミドルウェアの標準化、ミドルウェア流通
の仕組みの構築である。
(1)流通可能なミドルウェアの枠組みの構築
ミドルウェア流通のためには、バイナリーコード形式、ソースコード形式などを標準化する必要がある。MW-WGでは、T-Kernel上で動作するミドルウェアの標準流通
形式として"T-Format"を定めた。
(2)ミドルウェアの標準化
一般的なミドルウェアに関しても、その上に構築される各種ソフトウェアの流通
性のために、APIを標準化する必要があり、C言語ライブラリとデバイスドライバを中心に標準化を進めた。
(3)ミドルウェア流通の仕組みの構築
MW-WGでは、ミドルウェア流通のための仕組み、T-Distを構築している。これは、T-Engine、μ
T-Engineに標準的に搭載されているセキュアチップであるeTRONを利用した、マイクロペイメント機構を用いた、ミドルウェアのオンライン配布を可能にするメカニズムである。またこのT-Distの仕組みを使って配信するミドルウェア集として、T-Collectionの構築も行っている。
3.3.4 Java WG [JV-WG]
Java WGは、ミドルウェアの中でも特にJava言語環境をテーマとした活動を行う。Java-WGでは、T-Engine、T-Kernel上のJava言語処理系として、J2MEのConnected
Device Configuration (CDC)に着目し、その構築を進めている。更に、T-Engineアーキテクチャの要件を満たすために、文字コード、暗号認証などのセキュリティー機能、ヒューマンマシンインタフェース等に関するプロファイルの仕様構築、参照実装を進めている。具体的に現在まで、以下の仕様に取り組んだ。
(1)TRON多国語コードプロファイル
アジアにおける多漢字コンテンツを扱うことが可能な汎用的な多国語文字コードとして、トロンプロジェクトではTRONコード仕様を定めている。Javaの基本文字コードはUnicodeであり、標準のままでは、TRONコードのような多漢字コンテンツを扱うことができない。そこで、Java言語環境において、TRONコードを扱うためのプロファイルの構築を行っている。
(2)eTRONプロファイル
T-Engine、μT-Engineには、eTRON仕様のセキュリティーチップを搭載できることが標準仕様となっている。そこで、T-Engine上のJava言語環境からeTRONチップが扱うための、標準プロファイル仕様を構築している。
3.3.5 ユビキタスコミュニケータ WG [UC-WG]
ユビキタスコミュニケータWGは、T-Engineプロジェクト/ユビキタスIDプロジェクトが目指す最終目標である、ユビキタスコンピューティング環境と人間のコミュニケーションを司るマシンをテーマとした活動を行う。
こうしたマシンを我々はユビキタスコミュニケーター(Ubiquitous Communicator:
UC)と呼んでいる。UCは、現在の高機能携帯電話やPDA程度の大きさ程度のコンパクトな携帯型機器を想定している。しかし、現在のPDAのように電子手帳などの個人情報管理を行うことに特化したものではなく、リッチな通
信機能とやさしいヒューマンマシンインタフェースを備えたコミュニケーションマシンである。ICタグやICカードへの非接触通
信、bluetoothなどの近距離通信、PHSやPDC、W-CDMAなどの無線公衆回線通
信など、様々な通信インタフェースを有する点が特徴である。HW-WGと協調しハードウェア仕様を定め、すでに第一次試作を完了した。
3.3.6 T-Linux WG [LX-WG]
T-Linux WGの活動は、T-Engine、T-Kernel上に T-Linuxを移植拡張部として実現することで、Real-Time
Linuxを構築することである。
3.3.7 Wireless T-Engine WG [WL-WG]
Wireless T-Engine WGは、T-Engineアーキテクチャを携帯電話応用に適用するための活動を行う。
3.3.8 ユビキタスID技術WG [UT-WG]
ユビキタスID技術WGは、ユビキタスIDに関する基盤構築、デバイス技術の開発のための活動を行っている。(活動の詳細は、本誌「ユビキタスIDセンター」を参照)
3.3.9 ユビキタスID応用WG [UU-WG]
ユビキタスID応用WGは、ユビキタスID 及びeTRONの利用に関する活動を行う。現在、ユビキタスIDセンターにおける実証実験のための仕組みである、EAPを構築して、ユビキタスID技術を使った実証実験の構築に向けた活動を進めている。(活動の詳細は、「ユビキタスIDセンター」を参照)
問い合わせ先
T-Engineフォーラムに関するお問い合わせ先は、以下の通りである。
T-Engineフォーラム
URL: http://www.t-engine.org/
e-mail:office@t-engine.org
ファックス:03-5437-2271


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